運動会が終わり、日常に戻り始めた頃、兄の様子に変化が見られるようになりました。
家で不機嫌な時間が増える。
些細なことでイライラする。
弟に強く当たる。
最初は、
「まさか反抗期が始まったのかな!?」
と思いました。
12歳という年齢を考えれば、不思議なことではありません。
けれど、どこか違和感もありました。
運動会が終わったばかりであること。
学校では特に問題なく過ごしている。
元気がないわけでもない。
変わったのは、家で見せる表情だけでした。
運動会前は、毎日が全力だった
兄は運動会で応援団長を務めました。
応援の振り付けを考え、
コールを考え、
みんなをまとめる。
学校でも家でも何度も練習を重ね、本番に向けて努力していました。
責任感の強い兄にとって、それは決して楽しいだけの時間ではなかったと思います。
うまくいかない日もありました。
悔しい思いをした日もありました。
それでも、弱音を一言も言わず、前を向き、一歩ずつ進んでいました。
振り返れば、運動会までの毎日は目標に向かって走り続ける日々だったのです。
本番が終わった瞬間、役目も目標もなくなった
運動会当日、兄は団長としての役割を立派に果たしました。
選手宣誓。
応援合戦。
6年生の仲間と挑む競技。
そのすべてをやり切りました。
親から見ても、本当に素晴らしい姿でした。
そして、達成感とともに、運動会が終わりました。
でも今思えば、兄はその瞬間に失ったのかもしれません。
毎日向かっていた目標。
頑張る理由。
全力を注ぐ場所。
それらが突然なくなってしまったのです。
頑張った子ほど、終わったあとが難しい
大人でも似た経験はあります。
大きな仕事を終えたあと、
資格試験が終わったあと、
長く準備してきたイベントが終わったあと。
ほっとする一方で、どこか空っぽになることがあります。
達成感と喪失感は、実は隣り合わせなのです。
兄も同じだったのかもしれないと考えました。
運動会という大きな挑戦を終え、
心の中にぽっかり空いたスペースを、自分でもどう扱えばいいのか分からなかったのではないでしょうか。
一番安心できる場所だからこそ
特に気になったのは、双子の弟への態度でした。
兄弟げんかも、いつも以上に増えました。
強い言葉が出ることもありました。
もちろん、相棒を傷つけていい理由にはなりません。
その都度、
「その言い方はよくないよ」
と伝えています。
だた、今振り返って思うのは、
弟が嫌で腹を立てていたのではなく、
一番近くにいて、
一番安心できる存在だからこそ、
心の揺れが出てしまったのかもしれません。
「家族の前だから見せられる感情」もあります。
熱意は消えたのではなく、行き場を探していた
そんな兄が運動会後に始めたことがあります。
筋トレです。
腹筋100回、毎日取り組んでいます。
最初は驚きました。
でも今は、少し分かってきました。
運動会に向けて燃やしていた熱意は消えたわけではなく、
向かう先を失っていただけだったのです。
兄は自分なりの新しい挑戦を見つけ始めているのかもしれません。
何かに本気になった経験があるからこそ、次の目標を模索していたのではないかと思うのです。
親ができること
私自身、最初は戸惑いました。
「なんでそんなに不機嫌なの?」
そう思った日もあります。
でも見方を変えてみると、
そこには頑張ったからこその心の揺れがありました。
だから私は、
「団長、本当によく頑張ったね」
そんな言葉を意識して伝えるようにしました。
すると、少しずつ胸の内を話してくれるようにもなり、
笑顔が戻り、心の揺れも落ち着いていきました。
親にできることは、答えを出すことではなく、
子どもが自分で次の一歩を見つけるまで、
そっと隣で見守ることなのだと、改めて考える機会となりました。
心が揺れるのは、本気で頑張った証
子どものイライラしている態度を見ると、つい問題ばかりに目が向きます。
でもその奥には、
- 悔しさ
- 達成感
- 疲れ
- 喪失感
様々な感情が隠れていることがあります。
今回、兄の姿を見て感じたのは、
心が揺れるのは、本気で頑張った証でもある
ということでした。
運動会団長という大きな挑戦を終えた12歳。
その経験は、きっと本人が思っている以上に大きなものだったのでしょう。
今は少し立ち止まりながら、
また新しい目標へ向かって歩み始める姿を、親として見守っていきたいと思っています。
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